2021年 06月 27日
大豆と辰巳芳子さん |

今年で97歳になられる辰巳さんは、今から20年近く前、子供たちが大豆をまいて育てる運動「大豆100粒運動」を始めた。子供の手のひらいっぱい、100粒の大豆をまいて育て、その様子を観察して収穫し、調理して食べる。その中で子供たちが自然と親しみ、風土や文化を学び、加えて、万一かつてのような食料不足の事態になっても、子供たちが苦しまないようにする運動だ。ある本で辰巳さんは次のように書いている「私は昭和14年から24年という堪え難い時代を生きました。戦中戦後の、人々を支える食べものに乏しかった時代。そのときの経験から、米と大豆があれば、なんとか生きていくことができる。そう思って、大豆100粒運動の会を作りました。この国は持たざる国です。日本の大豆の自給率は7パーセントと、大変低い。増産目的ではなく、豆を播ける子供を育てておく。人間を育てておくための活動が大豆100粒運動です。・・・万一の事態が起ったとしても、米と大豆があれば、たいていのことは乗り越えていけると私は信じています」。因みに、日本の大豆の収穫量は1908年(明治41年)には約50万トンあったのに、最近2018年(平成30年)には約20万トン、かつての半分以下になっているという。味噌や醤油、豆腐やきな粉や納豆・・・日本の食文化に欠かせない食材であるにもかかわらず、工業中心で突き進んできた日本社会は、大豆を手放してしまった。果たしてこのままで良いのだろうか?と私も疑問に思う。
最近は、小麦とそれを材料とする製品の高騰も問題になっている。気候変動による食糧危機の到来がささやかれる昨今。戦中戦後の苦しい時代を知っている辰巳さんの言葉は重いと思う。(そして元来、天災多い日本は、決して食料溢れる豊かな国では無いのだから)
by itokoshi
| 2021-06-27 19:27