2020年 10月 08日
「地の塩の道」を歩く |
塩の道とはかつて「千国(ちくに)街道」と呼ばれ、糸魚川から松本へとつながる総延長約120キロ、日本海と内陸を結ぶ重要な交通路だった。戦国時代、この道を使って上杉謙信が仇敵の武田信玄に塩を送った「義塩」の故事をご存じの方も多いだろう。この道の途中約50キロの地点が風の家のすぐ近くを通っており、しかも糸魚川~小谷村の間が、古くからの雰囲気を良く残しているという。私も以前から、このルートが「塩の道トレイル」(http://sionomichi-trail.com/trail.php)として地元自治体と有志により保存宣伝活動なされていると聞いてはいた。しかし、長距離でもあり忙しさの中、今まであまり関心を寄せていなかったのが正直なところ。ところが先日、NHKで「サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼」の特集番組を見ながら、この塩の道を、“自然の中を歩きながら人生を見つめ直す祈りの道”として活かすことは出来ないか、と改めて考え始めたのだ。聖書の言葉を使えば「地の塩の道」として。
とはいえ、実際この構想の実現可能性を探るためには、まず何より自分の足で歩いてみることが不可欠。50キロの道のりは途中に山あり谷あり、単なる平坦な舗装道路とは訳がちがう。もし人に勧めるなら、保存整備状況やら難易度も実際に歩いて調べておかねばならない。小谷村の観光連盟が作ったパンフレットで調べてみると、糸魚川教会~信州風の家までのルートは、どうやら2泊3日の日程。途中に温泉地での宿泊を入れて実施しなければ難しいようなのだ。
こうして昨日一人で歩いてみたのは、糸魚川教会~山間部の根知(ねち)地域までの最初のルート、約15キロの道のり。出発時間が朝10時近くになってしまったため、急ぎ足でほぼノンストップで3時間15分。ちゃんと休憩を取り落ち着いて歩けば、4時間~5時間はかかるだろう。いきなりの長距離歩行で、さすがに終了時には足の筋肉がパンパンに張っていた。今回のルートは途中に峠があるものの平坦な道も多い。そしてここから先のルートがいよいよ本格的な山道となる。「この地の温泉宿が1泊目だろうなあ・・・」実際に体験したからこそ、こうした具体的計画を立てることができた。その意味で有意義な旅であった。
でも何より印象的だったのは、秋の花々に彩られた街道沿いの家々、点在する石仏や古跡の風情、そして静寂に包まれた山道などだ。歩きながら疲れた心身が癒やされる思いがした。これから折をみて少しずつ、更なるルートの体験を重ねていきたいと思う。
by itokoshi
| 2020-10-08 16:41